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2006.07.15 (土)

「 テポドン発射は現実の脅威 経済制裁にとどまらず政府は日本防衛の軍事的備えを急げ 」

『週刊ダイヤモンド』    2006年7月15日号
新世紀の風をおこす オピニオン縦横無尽 649

7月5日、北朝鮮が長距離弾道ミサイル、テポドン2号一発を含む六発のミサイルを日本海に向けて発射した。

ミサイル発射の報告を受けたブッシュ大統領は、直接的に米国への脅威となるわけではないとして、予定どおり家族とともに米国の独立記念日の行事に参加し、団欒の時を過ごしたそうだ。この種の“無視”が、金正日総書記には最もこたえることだろう。米国にとってはたいした危機ではなくとも、日本にとっては文字どおり最大の危機である。北朝鮮による軍事的脅威が現実となった今、日本国政府は目の前の危機に対処すると同時に、この危機を、ミサイル攻撃から日本を守りうるより高度の防衛網の整備につなげていくきっかけとすべきだ。

北朝鮮は1999年に、米国のクリントン政権との合意で、ミサイル発射を凍結すると合意した。小泉純一郎首相と結んだ平壌宣言にも、ミサイルの開発および発射は凍結すると明記した。一連の国際公約を、今回、破ったのはなぜか。金総書記の公約は、そもそも最初からなきに等しいのだ。金総書記にとってはどんな公約も誓約も破るのが前提であることをあらためて示したケースだ。ミサイル発射のもう一つの理由は、米国に対しても中国に対しても、金総書記自身の存在と“威厳”を誇示しなければならない状況に金総書記が陥っていることだ。

金政権下の北朝鮮は今、事実上中国の“植民地”となりつつある。北朝鮮最北の港で、日本海へのアクセスである羅津港は、昨年9月に中国が50年間の租借権を得た。租借は、かつて列強に包囲された清朝の中国が苦しんだ植民地的制度である。それを21世紀の今、中国は北朝鮮に要求し、金総書記はそれをのんだ。その結果、中国は初めて、日本海に出口を持った。

見返りとして、中国側は中朝国境の町、圏河から港に通ずる約67キロメートルの幹線道路の拡幅工事をするが、その道路の使用権も確保ずみだ。港周辺の開発も進められ、加工用倉庫も建設される。租借権料や土木、建設工事で少々の経済効果は生じても、これらすべて、中国の使用するインフラである。

羅津港は、そもそも32年には満州国と日本を結ぶ日本海の最短ルートとして開港された。中朝露3か国の国境に近接し、日本海に通ずる不凍港であるため、その地理的戦略的重要性はきわめて高い。その港の使用権を50年間にわたって中国に与えた金総書記の決定は、どう見ても北朝鮮の国土の切り売りである。

対米、対中関係で劣位に立つ金総書記、さらにその苛酷な治世への反発は深く広がっている。テポドン発射は、求心力を高めるためにどうしても必要だったと見られる。

金政権に対して、日本が打つべき手は明らかだ。5日午前、安倍晋三官房長官がすでに発表したように、日本が行なうことのできるすべての制裁措置を実施することだ。脅威に対しては戦うという日本国の国家意思を示すことは、北朝鮮のみならず、中国や韓国へのメッセージともなる。

制裁の象徴として、政府は真っ先に万景峰号の新潟港への入港を禁止した。当然の決定であり、その実行は評価できる。次に米国との協力関係を強め、ミサイル攻撃から日本列島を守るため、迎撃ミサイル・パトリオット3の配備も急ぐべきだ。日本国への軍事的な脅威が現実のものとなった今、日本を守る軍事的備えを最速で整備し、北朝鮮に対する個々の制裁措置を完全に実施することを怠ってはならない。

だが、同時に、そこにとどまってもならない。今回の危機を教訓として、軍事力の整備を外交の重要要素と位置づける方針を確立していくべきときだ。

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トラックバック: 1件

  1. 北朝鮮の特使ですか?山崎拓殿

     各国協調による経済制裁の動きに包囲され、6ヶ国協議への復帰を拒否し、ARF(ASEAN地域フォーラム)脱退までほのめかした北朝鮮。ミサイル発射を「正当な…

    トラックバック by 博士の独り言 — 2006年07月29日  10:27

櫻井よしこ氏がネット新番組の発表をいたします。
「 テポドン発射は現実の脅威 経済制裁にとどまらず政府は日本防衛の軍事的備えを急げ 」

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